スイッチ待ちぼうけの「うくすつぬ物語」

俺は自分の住民票コードがどういう数字の並びなのか、
カラヤンに尋ねたかったヨエロ寸。
しかしそうするとカラヤンは、なぜ住民票コードを知りたいのと聞き返してくるかもしれなかった。
それは返答として自然な第一声だろうけれど、そうなると俺はカラヤンを一瞬くちうるさいと強く感じてしまう。
それで俺は、自分の住民票コードへの興味が一気に冷めてしまう。
だから俺は単に黙る。
それがただの無言で、特につっけんどんではないということは、通る話しではないだろう。


俺はシザリンへの炊事奉仕がバリ難だ、ゴリ難だ。
しかしシザリンも俺もむせやすいから、そこは共通しているのだから、
俺はぬたは作れると思う。ぬた、むせない。
ちょうど献みそしたいと思ってたから、
甲羅に2、3穴うがって、
俺のみそでタコとわかめを和えよう。
俺の肉を俺のみそで和えてもいいが、献肉こわい。


俺は、カラヤンとシザリンと一緒に、タコと俺のみそのぬたを、食べたいと思います。


すげかえる。
俺の蟹生を、今とはどこか違った蟹生にすげかえたら、
俺は少しはましなカニになれるのか。

カラヤンはまだシザリンをましにしたいと思ってるのか。

(柴)




すごくいいボーダーシャツを着ている人に
楳図かずおみたいですごくいい!と言ったらお相手が豹変。
つっけんどんな態度を示され、ジッピはまたひとりになりました。
いったいジッピは距離感に関してどう考えているのか謎。
それは人なつっこいと言われることもありましたが、時に病だ。
ジッピのお父さんはザッパでした。


ジッピは銀行員か郵便局員でした。
ただ、まあ簡単に言えばとにかく義理人情義理人情で、そんなジッピだったので
他の銀行員か郵便局員は煙ったガッタ。いちいち口やかましいから。
今ので気持ちが伝わるとお、お、思っているのか
といったことをいちいち口やかましい。
はい今の心こ、こもってない
とか
はい目をみ、見て話してない
とか口やかましい。
楳図かずおのときだって、そう思われていたに違いなかろう。
当の本人は人の目なんて本でしか見たことがないくせに。
でもジッピはそういった物理的でない大事なことを信じてやまない。
気持ちのこもった手作りマフィンは絶対においしいことを信じてやまない。
愛の歌声は地球を救うことを信じてやまない。
妖怪の存在、カメと人間のコミュニケーション、ガルガリ博士のパンク感を
信じてやまないから。
そのぶんだけジッピは、伝わっていなさ感がすごく怖かったです。怖いです。
ちゃんとこっちの言いたいことが伝わっていないかもしれないと思うと
ジッピの髪の毛は緑色になりました。
正確にはエメラルドグリーン。
楳図の際、ジッピは緑毛だった。
ジッピは良かれと思っていたから。銀行か郵便局でもいつも。
ジッピの地毛はもう、黒と緑の程よいお洒落な感じになっていました。
伝わらない。ああ。といったあきらめをじつはご存じでしたから。
伝わらないまま、その場を去らなければいけないこともあったから。
ジッピはなかなかあなどれん奴でした。
それなりの、ジッピなりの苦悩が、ジッピの変色した地毛には垣間見れました。
たまに茶碗のご飯に指で穴をうがって、そこにぬたなどのおかずを入れている時も
垣間見れました。
本当はもうそんなこと考えたくもなくて、
右脳と左脳をすげ替えたら正反対の人格になるのか整形外科にお問い合わせようか。
に関して考えている自分でありたいとは、常日頃感じていた。


次の日は時雨れた。
周りはまた煙ったガッタ。口やかましいから。
雨に濡れたジッピの髪は乾いているときより黒っぽく見えて
わたしは少し安心し、煙たがった。


(脇)