命題:「しみったれ」と「せみしぐれ」の二語が残っています。どうにかしなさい。

しみったれせみしぐれ → 並べかえ → しみれしみれぐったせ


台詞「しみれしみれぐったせ」


その冬を越した大根は、それはそれはキレイに干ささって、
真っ白な干し大根に仕上がっておりました。
そんな寒く美しい冬のあとの春というものは、
心がおそろしくささくれるものです。

 許すまじ春来

お松はただでさえ眠い春に
面倒くさいと感じることも許されず、
煮ます。
干し大根と豚とにんじんをしょうゆと酒とみりんで煮ます。
ばあさまがもういつのことだろう、
引き出しに隠したまんま忘れた黒砂糖も
加えて煮ます。
なんのために煮るか?
真っ白い大根を
茶色く、より濃く茶色く、もっとも白でないところまで
煮〆るためだ。
しみれ。ぞんどこしみれ。許すまじ。許すまじ。
お松は煮ました。
しみれしみれぐったせしみればよがべがあほ。
煮しめ煮しめたなら、
お松、休みなさい。
いつか、冬っきり、それっきり、
終わりが来ますように。
お松の思いが私には親しみ深いものとして
同情したってよかべが。
される方だってわるい気しながべ。






しみったれせみしぐれ→並べかえ→しみしぐれ、せみったれ→しみ師グレ、蝉ったれ 


しみ専門で丁寧に問診するグレさんはブラジル育ちだから
ニッポンではなんか浮いていました。
子供はそうゆう珍しい感じがただ楽しい、とゆう無垢な気持ちが、
好奇心と言いますか、そうゆう気持ちが大人よりもだんとつに上回っておりますので
グレさんの周りにはいつも子供たちがうろうろうろうろしていました。
子供たちは決して、直接グレさんに近づくことはしませんでした。
あやしい人とは関わるべからず、とゆう大人の人の言い付けが
脳みそにしみついて取れませんので。
たったひとり、天才バカボンでいうとハタ坊みたいな感じの子供だけが
グレさんにべたついてきておりました。
彼の頭にはハタが刺さっていませんでしたが鼻水はたれていましたので
グレさんの衣類にも鼻水は付着しました。
そんなハタ坊まがいの子供をグレさんはかわいがりました。


そうやって鼻水がぴゃっぴゃと飛ぶ様子を蝉ったれと言うのです。
蝉が飛ぶ瞬間に放尿する様子からとったとゆう説もありますが、
ブラジルではその様子のことを
しぇみちあーれ
というところから変形して 
せみったれ
とゆう説もある。
カスティーリャがカステラになったみたいにね。


グレさんはそんな楽しい話をして聞かせました。
そんなときには必ず遠巻きに150人くらいの子供たちが円を作って座っており、
近づかないまま話を聞いているのでした。


ある日ハタ坊まがいは、すっ転んで頭がぱっくり、
ぬけさく先生みたいに脳みそが公開されました。
なんの言い付けもしみついていないハタ坊まがいの頭の内部は
キラキラしていました。しみひとつないきれいな脳みそ。虹色。
あら、というてグレさんは頭を蓋をするように閉めて、
ブラジル国旗でロックをかけました。
それを見ていたいつも遠巻きで話を聞く約150人の子供たちは
あんな脳みそになりたい!と心拍数を上げて近づいてきましたが
グレさんはしみを取ることはできない、と言いました。
大人の言い付けを守れる子は、そんな大人になれる子だから、
そんな大人になりなさいよ。
グレさんの手は、しみを取りたくてうずいていましたが、
そんな日が来たときには、そう言ってやさしく諭すのですと決めておりました。
グレさんは、そんな大人でした。